公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
小説家になる夢をかなえた町子(藤山直美)は、健次郎(國村隼)へのプロポーズの返事を保留にしたまま、今はただ書くことに夢中。机の上の写真を見ながら花岡写真館で育った子ども時代を回想している。その大切な写真館は、昭和20年6月の空襲ですべて焼けてしまう。幸い町子をはじめ、家の者にけがはなかったが、徳一(城島茂)はその後、体を壊して寝ついてしまった…。現実に引き戻された町子は、疲労で倒れる。
しかし、こう毎日前日の振り返りをやる朝ドラというのも珍しい。これより後の「ゲゲゲの女房」も振り返りは毎日ではなかったような?
和代「あっ、徳永先生…」
町子「後からかけ直す」
和代「すいません。今、手が離せませんので…」
夕方になっても自室で原稿を書いている町子。ため息をつき、机の上の家族写真に目をやる。
町子「お父ちゃん。私、やっと、夢、つかんだからね」
振り返りここまで。
小説家になる夢をかなえた町子に大好きな父との思い出がよみがえってきました。
昭和13年 秋
写真館のスタジオ
浦田「こんな感じでいいですか?」
徳一「はい、はい! あ~、二枚目の坊ちゃん、ええ笑顔や! なあ! あっ、お父さん、ちょっと顎引いて…」
両親、小さい男の子の家族写真の撮影。
徳一「はいはい、そうです。そんな感じで。はい、じゃあ、撮りますよ~! はい! パチリ」シャッター音「あ~、きれいに撮れましたわ! うん! じゃあ次、大きさ変えて撮りますから」
浦田「楽にしといてくださいね」
振り向いた徳一は町子が見ているのに気付き、笑顔を見せる。町子も笑顔。
徳一「浦田君、ちょっと後を頼むわ」
浦田「あっ、はい!」
徳一「うん? どないしたんや?」
町子「ううん、別に…」
外から紙芝居の拍子木と子供の歓声が聞こえる。
徳一「紙芝居か」ポケットから財布を取り出し、小銭を町子に渡す。「孝子も連れてってやるんやで」
町子「うん!」嬉しそうにその場を去る。
徳一「すいません。お待たせしました」
孝子と階段を下りる町子。母が祖母に叱られていた。
イト「気ぃ付けなはれ! こないなとこに大事なハンコ置いとくやなんて!」
和代「すんません。うっかり…」
イト「うっかりで済みますかいな! 『用が済んだら、お母さんの部屋にちゃんと返しときなはれ』て言うたはずやで!」
和代「すんません!」
イト「もう、お母さんに怒られるのは私なんやさかい、もっと商売人の嫁らしゅうしてもらわんと!」
和代「ほんまにすんませんでした!」
階段の陰からそっとのぞき見していた町子だったが、孝子に押されて廊下へ。孝子は堂々と歩いて玄関に向かう。このうちにも嫁姑問題があったとは。
紙芝居を見に行った町子たち。
紙芝居屋「『ほんま、役に立たん子やで、この子は! もっと丁寧に磨かんか!』
『すんまへん。ちゃんとしますさかいに堪忍しとくんなはれ』
奉公に出されたその日からミツコの苦難の日々は始まったのでありました。
『お母ちゃん…。お母ちゃ~ん! あ~!』」
町子「かわいそうやな」
孝子「ミツコちゃん、お金持ちやのに何で奉公に出されたん?」
町子「お父さんが悪い人にだまされて何たら保証人のハンコ、ついてしもたからや…。ハンコって…怖いねん」
孝子「怖いな~」
2人で涙を浮かべながら紙芝居を見ていた。
古い街並み
町子はおめかしして赤い着物と頭に大きなリボンをつけて、叔母の昌江と電車に乗って出かけている。
町子「映画終わったら、また、甘いもん屋行こな。お汁粉食べよな」
昌江「ちゃ~んとバアバアばあちゃんにお小遣いもうてきたよって。そのかわり、おとなしい見てんねやで」
町子「は~い」
映画館のロビーに開始のブザーが響き、観客たちが続々移動する。
映画
駕籠に乗った人を男が追いかける。
町子「何で追いかけられてんの?」
昌江「シッ!」
駕籠に乗せられていた女性が口を布で縛られていて、坊主?が助けようとする。駕籠を追いかけていた男がひもを投げ、女性と引き合いになってるところに、頭巾をかぶった男が登場。男を切りつけた。
町子「あっ! はあ~!」
立ち上がって叫んだので、ほかの観客たちは笑った。昌江は慌てて座らせる。また、町子が今にも叫びだしそうになっていたので口を押えた。
映画は鞍馬天狗? オープニングを確認すると資料提供は日活。昭和初期から昭和31年もの長きにわたり演じ続けた嵐寛寿郎かな? 昭和13年には2本の映画が公開されている。
着物の感じとか違う気もする??
こっちはこっちでキャストの役名を見ると新選組の話らしい。
映画館のロビー
町子「待って~!」
昌江「あんな恥ずかしいことあらへんかったわ。あんなとこで『あっ!』やなんて言うて立ち上がって! 私、もう、顔から火ぃ出たわ! あ~、恥ずかしい!」
町子「ごめんなさい!」
昌江「知らん、知らん! もう私帰る。もうマコちゃんなんて連れて映画、見に行けへん!」
町子「『あっ!』て言うて、ごめんなさい! これからはもう『あっ!』て言いません! 『あっ!』て言わんと黙って見てるから! 『あっ!』て言わへんから! 『あっ!』て言わへんから! 『あっ!』て言わへんから!」
町子の声にまたしても注目が集まる。
昌江「お願いやから、もうしゃべらんといて!」
町子を連れて、ロビーのベンチに座る。
昌江「あんたには負けるわ」
町子「なあ…」
昌江「何?」
町子「映画で女の人、何で悪い人に追いかけられてたん?」
昌江「あの人のお父さんがだまされて借金してな、そのカタに娘さん、取られそうになったん。そやから一生懸命逃げてたの」
町子「なあ、そのお父さんもハンコついたん?」
昌江「う~ん、そやろな…。証文にハンコついたんやろな」
町子「あ~、やっぱりハンコや」
写真を現像している徳一。「ほ~ら、よう撮れてるわ。うん。かわいいぼんや」
町子「お父ちゃん、うっとこハンコある?」
徳一「ハンコ?」
徳一は町子の手を引いて、机の中にしまっていた大きなゴム印を見せた。「これか?」
町子「あんまりこれつかんといてな」
徳一「何でや? 日に20~30ぺんは押すで。ほれ。うん。ほな。うん」
封筒にゴム印を押す。
花 岡 寫 眞 館
大阪市福島區福島西通三丁目
電話(福島)九四八番
バアバアばあちゃんの部屋
ウメ「和代さん、このハンコがどない大事なもんか分かってはりますのんか? 実印やで」
和代「すいませんでした」
聞き耳を立てている町子。
子供部屋へ走っていく。
町子「ハンコ! やっぱりハンコや! 孝子、うっとこもハンコでえらいことになってんねやわ!」
町子が泣きだし、つられて孝子も泣きだす。
徳一「お~、どないしたんや?」
町子「お父ちゃ~ん!」
孝子「お父ちゃ~ん!」
2人とも徳一に抱きついて泣き続ける。
徳一「何や? どないしたんや!?」
夜、食堂。一同の笑い声。
常太郎「どっかに売られる思って心配やったんか?」
茂「安心しい。あのゴム印で保証人にはなられへん」笑い
徳一「町子、心配せんかてええ。お父ちゃん、ここ潰すようなこと絶対せえへんから」
常太郎「そんなことしたらワシが承知せえへんよってな」
イト「そやで。おじいちゃんが頑張って街頭写真から始めはった仕事やさかいな」
常太郎「中之島公園でカメラと三脚担いで、お花見に来た家族連れに声かけんねん。『写真ひとつどないだす?』てな」
ウメ「何、言うてますねん。声かけてたん私ばっかりですがな」笑い
常太郎「いや、確かに、お母ちゃんが優しいに『お写真おひとつどないだす?』言うたら皆、立ち止まってくれはったんや」
ウメ「あのころの中之島は、ほんまにぎやかできれいなとこやった。茶店も並んで夏はビアホール。岐阜ちょうちんがゆ~らゆらしてましたなあ」
常太郎「そのあと、最初に荒物屋の2階に店出して、ここに写真館を建てたんが、昭和の初め」
ウメ「町子や孝子のためにお父ちゃんが頑張ってな、これからもっともっと大きしてくれはるんやで」
徳一「わ! こら気張らんとな」
茂「兄ちゃん、頼むえ~!」
浦田「僕らかて困りますわ。ここなくなったら、こんなうまいもん食べさせてくれる勤め口、二度とおまへんもん!」
イト「そら、当たり前です。うちとこは働き手の食べもん、よそさんみたいにしまつしまへんよってに…」
常太郎「はいはい。また始まったで!」一同、笑い
亀田「あげる」
和代「あんた、まだ食べんの?」
町子に食べ物を分ける亀田、優しい。
深夜
カメラの手入れをする徳一。
町子「まだお仕事?」
徳一「お父ちゃんはここにいてんのが好きなんや」
町子「なあ…お母ちゃん、バアバアばあちゃんとおばあちゃんとケンカしてんの?」
徳一「うん? フフフ。けんかなんかしてへん」
町子「ほんま?」
徳一「心配せんかてええ。誰もけんかなんかしてへんし、お父ちゃんはハンコつかへん。みんな、ここへな、うれしい気持ち、いつまでも覚えときたい思て来はんねん。うん…赤ちゃんが生まれた。結婚した。学校へ上がった。そん時の楽しいうれしい気持ち忘れんように、この紙の中にギュ~ッと残してあげんのが、お父ちゃんの仕事や。大事な仕事やろ?」
町子「うん!」
徳一「町子も一緒や。心の中で思いついたドキドキしたお話、この紙に残して、みんなに見してあげたいんやろ?」
町子うなずく。
徳一「お父ちゃんはな、町子の書くお話が大好きや。写真の仕事と同じくらい大好きや。ほんでな、お父ちゃんはお母ちゃんのこともばあちゃんもバアバアばあちゃんも孝子も、みんな大好きでものすごう大事なんやで…」
町子「お父ちゃん、大好きや! お父ちゃん!」
徳一「そっか」
町子「お父ちゃん、大好きや!」
けれど…父の大切な写真館は昭和20年6月の空襲ですべて焼けてしまいました。
昭和20年6月
美しい街並みが一瞬で焼け野原に。
徳一は、その後、体を壊して寝ついてしまい、その年の暮れに亡くなりました。
店の焼け跡から写真館の看板を探し出し、呆然と立ち尽くす徳一。
徳一「お前は、好きなこと、ずっと続けんねんで…。大事なもんつかんだら…手ぇ離さんとギュ~ッと握っとくねんで」
現代に戻り写真を見ている町子。
信夫「お姉ちゃん。お姉ちゃん!」
町子「は~い!」
茶の間に行くと信夫から写真が差し出された。徳一が撮った家族写真。「これ。裏、見てみい」
写真の裏には、徳一が押していた花岡寫眞館のゴム印が押されていた。
町子「あら?」
信夫「取引先にな、写真館の話したら『これお宅で写してもろたんやないやろか?』て」
町子「これ」
和代「へえ…」
信夫「その抱かれてるぼんやねんて。今はもうええおっさんなんやけどな」
町子「お父ちゃんが撮った写真や…」
和代「そやな!」
町子「お父ちゃんが一生懸命、心を込めてした仕事残ってたんや…。大事に大事にしてくれてはったんやな」
和代は涙ぐむ。
町子「さて…」
和代「今夜も夜なべか?」
町子「せっかくつかんだ夢やもん、一生懸命やらんとね」
しかし、立ち上がり歩きだしてふらついた。
和代「町子?」
信夫「お姉ちゃん、どないしたん!?」
和代「町子!」
町子「何かお母ちゃん寒気がすんねん」
和代「え?」
町子、そのままへたり込む。
和代「あっ! あっ…。いや…えらい熱やないの、あんた!」
信夫「お姉ちゃん!」
和代「町子!」
信夫「お姉ちゃん、大丈夫なん!?」
和代「町子!」
信夫「お姉ちゃん!」
ミニ予告
町子「嫌! もう嫌や! 注射、嫌いやから、やめて!」
従業員もいたのに写真館は今はもうない。店が空襲でなくなったせいもあるけど、信夫が幼過ぎて写真館復興とはいかなかったのかな。