公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
純子(山口智子)が浜風荘の女主人になってから、一週間。掃除をもっと丁寧にと、女中のヨシ子(川田陽子)に注文するとふてくされてしまう。垣本(岡八郎)やキク(紅萬子)が板場で純子たちの不満をこぼしていると、純子が来て、部屋の担当の決め方について提案する。雜賀(桂枝雀)が純子たちの様子を見に泊まりに来ると、清彦(生瀬勝久)が血相を変えて追いかけてくる。アメリカに北川を追いかけていったつやからの手紙に…。
浜風荘
純子「おおきに。ありがとうございました」
純子が浜風荘の女主人になってから1週間。まずまずのスタートであります。
いつも着物というわけじゃなく、今回は仲居さんまで全員洋服。エプロンを当てながら廊下を歩くあき。
純子「お母ちゃん。ちょっとちょっと。ほら、こういうとこな、ほら、ちっともきれいになってへん」障子のさんを指で触る。
あき「いや、ほんまや」
純子「なあなあ、ほら鏡台も前の方をざっと拭くだけだから鏡の後ろはほこりがたまってるやろ」
あき「あら、お掃除したん、久美子さんか?」
純子「そうや。いつも私が後でお掃除し直してんのやけど」
あき「一遍、言うといた方がええんと違うか?」
純子「そやけど、何や知らん嫁いびりしてる、おしゅうとめさんのような気分やわ」
あき「キクさんの方はいつもちゃんとしてはるのになあ」
純子「やっぱり言うた方がええやろか」
あき「そやな」
純子「こんなこといちいち言うの、ほんまかなんねんけどな」
あき「人使うの難しいな」
純子「久美子さん、ちょっと来て!」
久美子「はーい。何です?」
純子「あのな、言いにくいのやけど、こういうとこな、ほら、ほこりが残ってるさかい、もうちょっと丁寧にお願いします」
あき「目につかんようでもな、お客さん、よう気が付かはるし」
純子「隅々までな」
久美子「へえ、すんません。気ぃ付けます」
不満そうに廊下を歩いていく久美子。
純子「気ぃ悪くしたんやろか」
あき「そやけど、黙ってるわけにはいかへんやろ。これからは純子のやり方でやるしかしょうがないやん」
純子「そやな」
板場
久美子「あ~あ、やりにくなった。キクさん、そない思わへん?」
垣本「どないしたんや?」
久美子「細かいことにいちいち口出されたらかなんわ。いくら女将さんかもしらんけど」
キク「素人さんやから、いろいろと言わはるんや。お料理順番に出せとか。思いつくの勝手やけど、働いてるもんの身になってほしいわ」
垣本「多少のことは辛抱しいや。そのうちに女将さんかて分かってきはるやろ」
純子が板場に入ってきた。「なあ、キクさん」
キク「はい、何ですやろ」
純子「あのな、お部屋の係のことなんやけど、ちょっと偏ってるのと違うやろか」
お客さんの払った15%の奉仕料はそのまま係の仲居さんのものになる。松の間や楓の間のようないいお部屋のお客さんはたくさん払うし、梅の間あたりのお客さんは安い。すると、松や楓にいつもついてる人と梅につく人はひとつきにだいぶ差が出る。お部屋の係を決めるのは仲居頭のキクの仕事だが、係が偏るのは不公平だと純子は言う。
キクは、高いお部屋の仲居は古い仲居がつかないとと承諾しない。純子は、奉仕料を一旦、お帳場に入れて改めて月末に分けるようにしてもいいと返すが、キクは「要するに私が取り過ぎてるて、そう言わはるわけですな」と怒りをあらわにする。
垣本「キクちゃん、そらしゃあないのとちゃうか? 女将さんもそない言うとっとやし。今までは今まで。新しい女将さんにはそれなりの考えもあんのやろ」
キク「そらま、女将さんのお好きなように。私は逆らえる立場やおまへんさかいな」
純子「ほな、奉仕料は一旦、お帳場で預からしてもらいますさかい。とにかく一遍、そのやり方でやってみまひょ。なっ?」
気まずい雰囲気。純子が板場から出るとキクは大きなため息をつく。
垣本「まあまあ、キクちゃん、そんな顔しいなや」
キク「頭痛なってきたわ。明日、休んだろかしら」
さらに、ヨシ子には、いいお客さんついたら粗相のないようにと注意する。おどおどしているヨシ子といたたまれない小ぼんちゃん。
玄関で水まきをしているあき。今日は着物。浜風荘を久助が訪ねてきた。
あき「純子、雑賀先生やで! どうぞ」
純子「あっ、いや、校長先生!」
ちょっと見に来たという久助は、大作家のまねをして旅館で原稿を書くつもりで原稿用紙をたくさん持ってきたという。安い部屋でいいと言うが、純子は松の間に案内した。
純子「さ、こちらです」
久助「いや~、おおきにありがとう。おっ、こら立派な部屋やないか」
純子「おおきに」
久助「高いのと違うか?」
純子「何を言うてはりますの。校長先生から宿代は頂けません。そんなん気にせんといてください」
久助「いやいや、それは困るよ」
純子「まあまあ」
久助「そんなつもりやないから。え~?」
久助のスーツを脱がせる純子。
久助「ありがとありがと。もうええかげんでええよ、純子ちゃん。ハハハハ。着物姿もなかなかよく似合ってるよ」
純子「いいえ、そんな」
あきが部屋に入ってきた。
久助「いや、これは恐縮です」
純子「前からおいでになるのが分かってましたら、お部屋ぬくめといたんですけど」
久助「あっ、そんな心遣いもいるのか。なかなか大変ですなあ。ハハハハハハハ。いや~、ぼちぼち暖こうなってもらわんと困りますな」
あき「ほんまにな」
純子は帳場で伝票チェック。「なあ、お母ちゃん。これ、えらい高いんやけどほんまやろか」
あき「何?」
純子「これ、椎茸キロあたり2000円になってるやろ」
あき「そやなあ」
純子「どんなにええもんでも1500円ぐらいと違うやろか。特上物にしても3割は高いわ」
あき「ほかのもんもちょっとずつ高うなってんのと違うやろか。そんな気ぃするけど」
純子「板場さんがピンはねしてんのと違うやろか」
あき「それは竜王閣の板場さんが言うてはったわ。気ぃ付けんと板場の中にはええようにごまかすもんもおる言うて」
純子「やっぱり聞いてみた方がええやろか」
あき「そやなあ」
そこへ清彦が訪ねてきた。わらべ出版を訪ねたが、久助がこっちだと聞いてきたと言う。「そいが、おばやん、えらいことになってしもて」
純子「何?」
松の間
清彦がつやからの手紙を久助に見せた。
あき「つやさん、いつ日本へ帰ってきはるんですか?」
清彦「そいが…何か僕、頭がこんがらがってしもて。とにかく読んでら」
久助「ちょっと待ってや。おいやん、眼鏡がなかったら分からん」
同封されていたハートが描かれたドラム缶と子供たちの写真をあきと純子に手渡す。
清彦「お母ちゃんな、北川さんと結婚してしもたんや」
純子「えっ?」
あき「ほんま?」
清彦「ほんまも何も」
純子「どういうこと?」
清彦「分からん。僕には分からん。何でもな、北川さんが昔、新聞記者をやってたシカゴへ行ったらしいんや。そこで…何ちゅうんかな? ホールドアップ…つまり追い剥ぎやな。それに遭うて2人で逃げたんやて」
久助「何ちゅうこっちゃ」
純子「あの、それで?」
清彦「それで…。おいやん。おいやん話して。僕、もうよう話せん」
久助「ああ、いや、ですから2人が逃げてやね、それでまあ、これですね。はい。え~、つまりまあまあこのドラム缶の中へ2人してまあ逃げ込んでやね、なんとか難を逃れたということね。そして、ホッとした時に北川君があの調子で『奥さん、僕と結婚してくれませんか』。それで翌日、教会で式を挙げました」
あき「信じられへんわ」
清彦「そうや。そうなんやら」
清彦「知ってる。お兄ちゃんな、ガクッとして頭冷やしてくる言うて旅行に行ってしもたんや。そら、そうやで。知らん間に北川さんが僕らのお父ちゃんになったんやさか」
久助「アハハハ」
清彦「アハハてな、おいやん、北川さん、お兄ちゃんになってしもたんやで」
久助「あちゃ~。あら。あ、そうか。いや、『事実は小説より奇なり』なんちゅうのはこのことか」
あき「ほんでいつ帰ってきはんの?」
清彦「分かりません。ニューヨークからロンドン、それからヨーロッパ回って帰ってくるいうて手紙に書いてあります。もう知らん。何か疲れてしもて」
夜
秀平「いや~、興園寺の奥さんもやるじゃないか」
純子「信じられへんわ」
秀平「いや、いいよ。50過ぎて再婚なんてすばらしいよ。ドラム缶が取り持つ縁か。いいなあ」
純子「そやけど私、それ、うそやと思てる」
秀平「何が?」
純子「ドラム缶。奥さん、てれくさいもんやから、そんな作り話考えはったんやと思うわ。ほんまはミシガン湖に照る月を眺めながら北川さん、こう言わはったんやわ。『奥さん、結婚しませんか』なんて。それで多分、『コロラドの月』か何か歌わはって、奥さん、ポーッとならはったんやと思うわ。けど、お似合いの夫婦かもしれんな」
純ちゃんの妄想劇場を見ていた秀平は軽々とお姫様抱っこ。
純子「フフフ、嫌やわ、秀平さん」
翌日、純子は板場へ。「垣本さん、ちょっと聞きたいことがあんのやけど」
垣本「何でっしゃろ」
純子「仕入れのことや」
垣本「へっ?」
純子「みんな、仕入れ値がちょっと高いんと違う?」
垣本「いや、そら、多少よそより高いもん仕入れていまっせ。舌の肥えたお客さん、大勢来てくれてやしね」
純子「それはええのやけど、それにしても高すぎると思うのやけど」
垣本「どういう意味でっか。はっきりしとくなはれ」
不穏な空気になる板場。
うーん、旅館編、前途多難という感じであんまり…。来週から4時30分のスタートになるそうだけど、結局、相撲や何やらでつぶれることに変わりなし。もうこの枠で初見は見ないことにしよう。
たられば話をしても仕方ないけど、去年の9月に「純ちゃんの応援歌」、3月末から「マー姉ちゃん」、そして次に「芋たこなんきん」でよかった気がするな。関西モノが重なってるのもなんだかな~。