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【連続テレビ小説】純ちゃんの応援歌 (113)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

鹿児島からの客のことばに戸惑い、自信をなくしてしまう純子(山口智子)。食事を、全部いっぺんに出すと、途中で冷めてしまうから、と一品ずつ運ぶよう板場の垣本(岡八郎)に注文するが、仲居頭のキク(紅萬子)は何度も運ぶのは大変だ、と乗り気ではない。柿本が純子の言いつけ通り、一品ずつ支度すると、客から料理が遅いとクレーム。キクは、飛び込みの客が陰気だと、勝手に純子の決めた部屋のグレードを下げて案内して…。

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同時に再放送が始まった「マー姉ちゃん」が終わってしまったのに、「純ちゃんの応援歌」はまだ続きます。この枠、どうにかして! 録画で見るなら早朝でもいいでしょ!

 

昭和30年2月。甲子園に近い西宮の旅館・浜風荘の女将として純子の新しい生活が始まりました。

 

廊下を歩く清原先生。あ、今日はここだけだったな。

 

純子「今日の予約は2組。鹿児島の森田さんと5人さんと島根の伊藤さんが6人さん」

あき「大丈夫や。有馬温泉で3か月間、実地訓練をしてきたんやから。落ち着いてな」

純子はあきに着物を着つけてもらっている。

純子「大丈夫や。なあ、お母ちゃん、正太夫さんとこからの借金、10年で返すつもりで頑張ろうな」

あき「そやな」

 

純子「よし」

あき「大丈夫。立派な女将さんや」

純子「あかん。食堂の方が気楽や」

 

男「ごめんくださ~い」

純子「いらっしゃいませ」

男「鹿児島の森田ごわっと」

純子「はい、森田さま、承っております。お待ちしておりました」

キク「さあ、お荷物どうぞ」

純子「キクさん、桔梗と楓です」

キク「へえ」

 

男「ねえちゃん、松原鉄工ちゅうたらこっから近たとかい?」

純子「はい?」

男「荷物置いてな、松原鉄工行こうたと。歩んせ行がらとかい?」

純子「あ、はい…」

 

キク「はいはい、あの、松原鉄工さんやったら、ここから歩いて10分もかからしまへんわ」

男「そうかい。いや、初めのこってもう何も分からんで右も左も分からんで、もう、困ったもんだわ」

キク「アハハハ、そうですか。こちらでございます。どうぞ」

本格的な鹿児島弁。純子は戸惑っていたが、熱心に玄関で靴を磨くヨシ子を見てほほ笑む。秀平がこれから出かけると玄関に出てきた。

 

秀平「どうしたの? ボーッとしてるね」

純子「いや、今な鹿児島のお客さんやったんやけど言葉が全然分からへんねん」

秀平「大丈夫。そのうち慣れるよ」

純子「今日は?」

秀平「遅くなっても帰る。頑張ってね」

純子「大丈夫や」

 

板場では板長が新聞を読みながらタバコを吸っている。

キク「桔梗のお客さん、お会席、竹で5人前、6時ですわ」

垣本「はいよ」

純子「百合のお客さん、お夕食7時です。天ぷらでよろしい言うてはります」

垣本「天ぷらでっか。へいへい」

 

純子「それからな、お風呂場もうちょっと湯気を立てとかんと冷えてるようやから」

キク「はい。ヨシ子ちゃん」

ヨシ子「はい」

キク「お風呂場な、蓋開けて、もうちょっと湯気出しといてや」

ヨシ子「はい」

 

純子「なあなあ、キクさん、ものは相談なんやけど、お料理な一品ずつお出しするわけにいかへんやろか」

キク「一品ずつでっか?」

純子「そうや。一遍に並べてしもたら、お吸い物も揚げ物も冷めてしまうやろ。そやから、出来たてを一品ずつお出しするようにした方がええと思うのやけど」

キク「そやけど、そら大ごとでっせ。何べんも足運ばなならんし」

 

純子「とにかく今日からはそないしてほしいのや。板場さんもお願いします」

垣本「へえ、よろしおま」

純子「すんませんな」

垣本「小ぼんちゃん、ハマチ」

石田「へい」

 

純子がいなくなると、キクは垣本に「簡単にはいはい言わんといてほしいわ」という。8品から12品の料理をいちいち運んでいたら身がもたないとグチをこぼす。

垣本「しゃあないやないか。あない言うとってんやから」

キク「それにな、板場さんかて大変や思うで。一遍にパ~ッと作ってしもたらあとは何にもせんでええのに一品ずつ運んどったら、ずっと働いてなあかんやないの」

垣本「いや、そやからな今日のとこはやってみようや。やってみたら分かるこっちゃがな」

キク「難儀やなあ」

小ぼんちゃんはセリフはないが垣本のやり方に不満!?

 

廊下を歩く純子に久美子が声をかけてきた。飛び込みのお客さんが来たが、どうするかという話で、純子はお部屋が空いてるから泊めてさしあげたらいいという。久美子はあんまりいいお客じゃないと小声で話す。

 

純子は老夫婦を笑顔で迎えた。純子はキクに松の間へ案内するように言うが、キクは不満そう。キクは勝手に小さな部屋に通し、予約客ではないので1600円の前金を要求する。浩三はねえさんにとキクに心付けも渡す。どこか暗い雰囲気の夫婦。

 

純子「何でや? 松の間て言うたやないの」

キク「いいえ。松の間やったらお二人で2000円はもらわなあきまへん。あの人らはそんな人やおまへんで。まあ、女将さんも2~3年したら分かるようになりますわ」

純子は領収書をキクに渡すが、キクはあのお客さんは妙に陰気くさいので心中するかもしれないから気を付けた方がいいという。

 

桔梗の間へ挨拶に行った純子が挨拶に行くと、「女将さん、挨拶はよかどん、料理はどげんなっちょっとな」「刺身のあとがピタッ止まっちょっど」「こげん待たされたら食った気がせんの」「はやくせえよ」「焼酎も来んの。仲居さんに言うたど、どげんなっちょっとね」と口々に言われた。お客様に謝り板場へ。

 

垣本「そない言うてもね、女将さんの言うとおりにしてたらどないしてもこないなってしまいまんねや。前の料理が片づく頃を見計ろうて次にかかりますさかいな。ま、お客さんにはあんじょうおわびしといてください」

純子「すんませんけど、なるべくはようお願いします」

垣本「へい、やってま」

 

純子と入れ違いに入ってきたキク。「そういうことやったんかいな。なるほどな。これで女将さんも反省しはるわ。なかなかやるやないの、垣本さん」

垣本「ハハハハ」

 

廊下で悔しそうな表情をする純子。

 

老夫婦の部屋…オープニングを見直したら酒田さんというのか。「マー姉ちゃん」を思い出す。酒田ミネ子役の島村晶子さん、酒田浩三役の北村光生さんともにどちらもご存命みたいだけど、あんまりドラマに出てる人ではないみたい?

浩三「来るんじゃなかったね」←すごいいい声

ミネ子「いえ、来て、うれしかったんですけどね」

ミネ子はテーブルの隅にうなだれている。

 

純子が料理を運んできて、ミネ子の様子に気付く。

純子「どないしはりました? 具合が悪いようでしたら、お医者さんお呼びしますけど」

浩三「いや、そうじゃないんですよ。昼間、野球場でね、甲子園を見てね、2人とも気がめいってしまいましてね。すいませんな」

純子「いいえ」

 

ミネ子「今日…。実は息子の命日でしてね。つい、いろいろと思い出してしまって…」

純子「いや、そうですか…」

浩三「ここへ来るつもりじゃなかったんですよ。東京から大分の日田という所へ行くんですけども途中でちょっと寄ってみようかということになりましてね。そこ、甲子園ね、昭和15年に息子が出場してるんですよ」

純子「甲子園ですか?」

 

浩三「ええ。私も中学生の頃に野球をやってましたが、とてもとても全国大会なんて夢でした。ところが息子が3年生の時に代表になりましてね。私も家内もアルプススタンドに陣取って、かちわりを頬張りながら、そりゃあもう夢中で応援しました。今思えば、あれが私たちの生涯の中で一番楽しい時間でした。まさに思い出の甲子園ですよ。息子の学校は1回戦で負けましたが、それでも満足でした」

純子「あの、失礼ですけど、息子さん亡くならはって…?」

ミネ子「昭和19年の今日が命日です」

浩三「予科練に行きましてね。トラック島で亡くなりました」

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ミクロネシア連邦のチューク諸島はかつて、トラック諸島、トラック島と呼ばれていた。日本軍の拠点にしていたが、昭和19(1944)年2月17~18日にかけてアメリカ軍の攻撃を受けた。

 

ミネ子「もう、とうに諦めたつもりでいたんですけどね。ここへ来るとついつらくなって…」

純子も思わず涙。

浩三「どうしました?」

純子「いえ、すんません。実は私にも野球をやってる弟がおりまして。甲子園には行かれへんかったんですけど、去年の9月の初めに亡くなったもんですさかい」

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ミネ子「まあ…」

純子「すんません、お客様の前で。そやからというわけやないですけど、お客様のお気持ちはよう分かります」

 

浜風荘の明かりが落ちて、純子が風呂場に行くと雄太がいた。

雄太「風呂、洗といた」

純子「おおきに。でも、雄太、期末試験なんやろ。お風呂の掃除はええさかい、はよ勉強し」

雄太「いや、何かちょっと手伝わんと居心地悪いわ。お姉ちゃん、僕な、教職課程とって卒業したら工業学校の機械科の先生になろかと思てんねや」

純子「何でまたそんなこと」

雄太「昭が死んでから、ずっと考えてたんや。高校の先生になってな、野球部の部長か監督になって、その子らを連れて甲子園に出てみたいわ。お父ちゃんの夢やし、昭の夢やし、僕の夢でもあるし」

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「高校の先生になって野球部の部長か監督になって、それで甲子園や」と言ってたのは昭。雄太にだって雄太なりの夢があったんじゃないのかな。

 

秀平帰宅。机に突っ伏して寝ている純子にそっとコートをかけた。

 

優しい純ちゃんの世界に意地悪な人たち登場。「マー姉ちゃん」の悪漢・天松屋なんてなんだかんだ笑える悪漢だったからなあ。間が開き過ぎてちょっと純ちゃん熱が下がりつつあるのが本音。