公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
マリ子(熊谷真実)たちがウラマド姉妹の家に戻ると、塚田(日下武史)が待っていた。出版のために紙屋に大金を払ったと聞いた塚田は、戦後のカストリ雑誌の氾濫による出版界の危うさを説く。それでも出版の道へ突き進もうとする磯野姉妹。「サザエさん」の面白さに納得する塚田も、B5版で出すようアドバイスする。一方、タマ(星清子)はマリ子たちに、現在もなお、磯野家に住む家族から磯野宅を買い戻して欲しいと頼み…。
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ウラマド姉妹宅の玄関
マドカ「さあ、早く! 塚田さん、お待ちかねでいらっしゃいますわよ。マリ子さん」
リビング
マリ子「まあ、塚田さん!」
塚田「『まあ』じゃないよ! しびれ切らして帰ろうと思ってたんだ」
マリ子「申し訳ありませんでした」
塚田「当たり前だよ。見たんだろ? 俺の広告を」
マリ子「はい、おかげさまで東京に出てくるきっかけを作っていただきまして、ありがとうございました」
塚田「きっかけって冗談じゃないよ。また君たちに活躍してもらおうと思って呼びかけたのに、おい、何だ? 出版やるんだって?」
マリ子「まあ! さすが鬼の塚田さん。お耳が早くていらっしゃいますのね」
塚田「鬼?」
ウララ「まあ、さあどうぞ。お掛けあそばして。大事なお話なんざましょう。立ち話はよくないことですよ」
塚田「まあまあ、しかしですな…」
マリ子「お久しぶりでございました。あの節はいろいろとお世話をいただき、本当にありがとうございました」
塚田「いやいや…あんたたちも無事で何よりでした。それにしてもだな、顔も見せないとはけしからんぞ、全く!」
マチ子「すみません。途中で一度陽談社の方へお電話差し上げたんですけども塚田さん、外出中でいらしたもので」
塚田「当たり前じゃないか。均ちゃんから電話もらってあんたたちが来てるっていうから、早速、田河邸へすっ飛んでったら2人とも消えたあとだった」
マチ子「あら、大宗先輩からですか?」
塚田「ああ」
ウララ「さあ、どうぞどうぞ」
塚田「はあ。とにかくこっちも忙しい体なんだからさ、あんまり右往左往させるなよ」
マリ子「すみません。紙屋さんに回ってたものですから」
塚田「それで、マッちゃんの漫画を出版するんだって?」
マチ子「はい。『サザエさん』といって連載物です」
塚田「そんなこと一回連絡してくれりゃあ、こっちで出してやったじゃないか」
マリ子「はい。でももうお金を渡してお願いしてきてしまいました」
塚田「どこへ!?」
マチ子「昭栄洋紙店といって印刷も製本もやってくれる所なんです」
塚田「それで一体いくら置いてきたの?」
マリ子「5万円です」
塚田「何!?」塚田さんの顔にカメラが寄る。
マリ子「5万円、内金として置いてきました」
ウララ「まあ、マリ子さん! そんな大金を初対面の方にですか?」
マリ子「でも紙を確保しないとどうしようもならないらしいんです」
塚田「このバカ! 知らんぞ、俺は」
マリ子「はあ?」
塚田「カストリ雑誌の氾濫でな、今の出版界は百鬼夜行なんだ。一晩で消えちまう取次店や出版社があるくらいなんだぞ」
マドカ「はいどうぞ」隣に座った塚田に切ったサツマイモを渡す。
塚田「いや…。とにかく食い逃げでもされたらどうするんだよ!」
マドカ「本当にどうするんでございましょうね」
マリ子「そんなことあるはずが…」
マチ子「そうよ。たとえ食い逃げされたとしても、もう、さいは投げられてしまったんだし」
マリ子「信じるよりほかはありません」
塚田「むちゃくちゃだな、もう…」
マリ子「だって福岡のうちの半分を渡したと同じなんですもの。もう私は食い逃げされたら断固承知いたしません!」
ウララ「そうそう」
マリ子「そうですとも! 草の根分けてでも捜し出し、私、言ってやります。ろくな死に方しないわよって」
マドカ「おやりあそばせ。そうなったら私たちも断固応援いたしますわよ!」
ウララ「ええ、私だってやりますわよ!」
塚田「いや、まあ…まあね、昭栄洋紙なら、まあ、ブローカーとは違うし、そんなこともまずないとは思うけどね」
ウララ「まあ…だったら何でそんな脅かすようなことおっしゃるんですか」
マドカ「そうですわよ。マリ子さんたちがおかわいそうよ!」
塚田「いやいや…落ち着いてくださいよ」
マリ子「いえ、私は大丈夫です」
ウラマド姉妹は塚田に紅茶をすすめる。
塚田「それでそのプランは出来てんの?」
マリ子「いえ、そういうところはまだ…」
塚田「まだって…だって出版するんだろ? あんた」
マリ子「はい」
塚田「どうしようもないな…。とにかくその…ちょっと原稿見してごらんよ」
マチ子「はい」
「サザエさん」を綴じた冊子を見た塚田「ほう~…これはこれは…」と笑顔になる。マチ子は真剣な表情。
塚田「いい仕事したんだな、あんた」
言われたマチ子もにっこり。
絵を描かせるつもりが出版のアドバイスをするはめとなった鬼の編集長。やはり出版に生きる男だったのでしょうか。
塚田「そうだな…思い切って変形にしてみたらどうかな? ユニークな本が出来るぞ」
マリ子「変形といいますと?」
塚田「B5版の横とじスタイルにするんだ。絵本のイメージもあるし、子供たちはのってくるよ」
マチ子「あの…」
塚田「とにかくやってみることだ。ただし、そうなまやさしい仕事じゃないってことだけは覚悟してろよ」
マチ子「はい。あの…細谷さんはあれから?」
塚田「ああ、細谷か」
マチ子「はい。元気でいらっしゃるんでしょうか?」
塚田「ん~…まあ、元気っていうほどでもないが、とにかく生きてる。信州の方へ引っ込んだきりだが、時々、手紙が来るよ。やっこさん、何か書き始めたらしいよ、小説を」
マチ子「そうだったんですか」
よかった~。
玄関を出た塚田とマリ子、マチ子。
塚田「それじゃあな。出版用の原稿が出来上がり次第、俺は待ってるぞ。また2人ともじゃんじゃん描いてくれよ、陽談社の本に」
マリ子「はい、よろしくお願いします」
マチ子「今日は本当にありがとうございました」
塚田「じゃあな」
田河邸
順子「まあ! じゃあ一旦福岡へお帰りに? あっ、そうですか。じゃあね、均ちゃんに東京駅まで送らせますから。まあ、何をおっしゃるのよ、マリ子さん。どうぞどうぞご遠慮なく」
背後で聞いている均だが、順子の会話から少しずつ遠ざかる。
順子「ねっ、均ちゃん」と後ろを振り返ると姿は消えていた。「あら、またいなくなっちゃった…。どうしたんでしょう? 均五郎さんは」
外に出た均「そんなこと言ったって…俺はマリ子さんにもう二度と合わせる顔がないんだ。あ~…いっそ死んでしまおうか…」
福岡・磯野家
村田「今の東京はまだまだひどか様子ではなかとですか? そげな所へ一体何ばしに?」
軍平「そうですたい。こん福岡におっても、マチ子さんはああして『夕刊フクオカ』に人気漫画ば描いておられるとじゃなかとですか。どげんすっとですか? そげんよか仕事ば放り出して」
はる「はい。マリ子に出版をやらせようと思いますの」
村田「出版? マリ子お嬢様が出版屋になるとですか?」
はる「はい。近頃あの子も何か体ごとぶつかっていける仕事がしたいと口癖のように申しますもので」
軍平「ばってん…」
村田「ああ~…おいたわしい限りですばい」
はる「何がですか? 村田さん。マチ子のものをマリ子が出版するんですから、これは文化的な仕事だと思いますよ。それに…」
軍平「それにまだ何かあっとですか?」
はる「マリ子は東郷さんの戦死を信じてはおりません。いつまでも待ち続けると言うております。それならば私もこれは長期戦の構えの覚悟をしなければならないと思いましてね」
村田「長期戦? ばってん奥様がなにもそげに…」
はる「何を言うんですか、村田さんは。待つと言うとるのはマリ子なんですよ。それも腰が曲がるまでも待つと言うております」
村田「はあ」
はる「どなたにもご迷惑をかけずに立派に夫を待ち続けるためには、この際、磯野家の独立を断固図らなければいけないと思いましてね」
村田「はあ」
はる「それならば『サザエさん』の出版が手ごろなお仕事だと私は思いますのよ」
村田「はあ~、なるほど…」
軍平「ばってん、30になるやならずの娘さんにそげん事業ができるとじゃろうか…」
はる「はい、構いまっしぇん。もし失敗したら初めっからやり直せばいいんです。ヤドカリではあるまいし、人間、生まれた時から家を持って生まれてきたわけではないんですからね。また裸からやり直せばいいんですよ」
村田と軍平にお茶をすすめる。
ひとたびこうと宣言したら、そのとおりに実行してしまうのがはるの性格。それを肝に銘じているだけに2人の心配もひとしおだったのでしょうが…
千代「大丈夫ですたい。今度は、こん、お千代ねえやがついとりますけん」
軍平「おっ! じゃあ、お千代ねえやも一緒に?」
千代「はい。こん、うちがついとる限りは皆様方を路頭に迷わすようなことは絶対にいたしまっしぇん」
村田「またまたふとか話ばしよって」
はる「人間、気持ちはふとく大きく持たなければいけまっしぇん。村田さん、あなたもですよ」
村田「は…はい…」
軍平「ばってん、奥さん、東京に住むうちはあるとですか? 今度はもう酒田んうちものうなって一体…」
はる「こういう時ですからバラックでもという覚悟はできておりますけど、マリ子がその方も偵察してきますはずですから」
ウラマド姉妹宅
タマ「するとうちはお買いになるんですか?」
マリ子「ええ。できれば皆さんがいらっしゃるこの近くにと思ってるんですけど」
ウララ「ええ、その方がよろしゅうございますとも。ねえ、おタマさん、あなたも適当なおうちを心掛けてさしあげてくださいませよ」
タマ「ええ、そりゃあもう」
マドカがお弁当を入れるのにちょうどいい花柄模様の袋があったんじゃないかとウララに聞きに来て、「じゃあ、マリ子さん、ちょっとごめんあそばせ」とウララ、マドカと共に退室。
タマ「いい年して何がお花の模様ってんだろ」
マチ子「まあ、おば様ったら」
タマ「アハハ、いえね、まあ一番格好のうちといったら元のあなた方が借りてたおうち。あれが一番格好じゃありませんか?」
マリ子「でもほかの人が入ってらっしゃるし」
タマ「そうそれなんですよ。インフレってんですか? まだ戦争中はね、物が足りないなりにヤミの取締りが厳しかったけれどね、あれからこっちまるで強いもんがね…もう本当に強いもんの世の中なんですからね」
マリ子「そうなんですよ。お米にしたって一日たったら昨日の値段じゃ買えないんですもの」
タマ「まあ、このうちはそれこそある財産を食い潰しているだけでしょう。私はね、この分で行ったら先行きウラマドさんたちはどうなるんだろうと思ってね、気が気じゃないんですよ」
マリ子「分かります、食い潰していく心細さは」
タマ「だったら、ねっ? あのうちを買い取っていただけないでしょうか?」
マチ子「でも、入っている人たちはどうなるの?」
タマ「出てもらえばいいじゃありませんか。そりゃあね、私だって前のうちの人にはね、別に恨みはありませんよ。だけど、ウラマドさんの人のいいのを幸いにして、あんたね、そのつまりこの…物価統制令でさ、戦争中で決めた家賃のまんま知らん顔して入っているんじゃ、ちょいと人情ってもんがなさすぎるんじゃありませんか?」
マチ子「ひどいわよ、いくら何だって!」
タマ「ねっ? だからさ、あなた方が買い取ってくださればウラマドさんも助かるし、私だって皆さんが元の所へ戻ってきてくださればさ、どんなにうれしいか…。ねえ、そうしてくださいよ。ここは人助けだと思ってさ」
マリ子「それは私たちだって一番願ったりかなったりですわ」
マチ子「そうよ、そうしましょうよ。だって人助けとなれば、お母様だって絶対文句はないはずよ」
マリ子「うん」
ということで家の問題については、やや明るい見通しを持ち、マリ子たちは第一次東京偵察の任務を終え、直ちに福岡へと取って返した次第です。
薄闇を走る蒸気機関車の映像。人気が少ないから早朝に帰ってきたのかな? ジャンケンしながら荷物を交代で持ったマチ子とマリ子が磯野家に到着。
加津子「そんなら母は…!」
マリ子「ええ、空襲の翌朝、確かにおばあちゃまの姿を見たという人が」
加津子「おったとですね! ほんなこつおったとですね!?」
マチ子「はい。だからこれからはちょいちょいと東京へ行きますし、その度に私たちも聞いて歩きますから」
加津子「ばってんそんならどげんして便りの一本もよこしてはくれんとでっしょう?」
字幕は”頼り”となってたけど、ここはさすがに”便り”じゃないか?
一平「じゃけん、東京へ行く度ごとにマチ子さんも聞いてくださるとそう言うとるんじゃけん」
マリ子「はい、必ず約束します。その後でおばあちゃまがどこでどうなさっているのか必ずはっきりさせます」
はる「ラジオの『尋ね人』にも諦めずに何度もお願いしてみましょうよ。ねえ、奥さん」
加津子「はい。ほんなこつそうでした」
一平「よかったよかった。マチ子さんにマリ子さん、本当にご苦労さんじゃった。ありがとう」
マリ子「はい。今度はきっともっといいお話をお土産にしますから」
本当にそうあってほしいものです。頼みますよ、マー姉ちゃん!
ツイッターでの実況を見ながらドラマを鑑賞するのは楽しいし、当時の事情を説明してくれて勉強になることもあるけど、批判の方に傾きだすと、一斉に口汚く罵りだすのはなんだかなー。
自分の好きなことをつぶやく媒体だけど、わざわざタグ付けて悪口言うことないでしょって思ってしまう。ツイッターを見なきゃいいけど、勉強になるツイートもあるからやめられない。磯野家の面々が人の厚意を無碍にして!みたいな怒り、私には分からない。
次の再放送作品が決まりました。大体発表されるのが118話辺りなんだよね。
【放送予定】
2022年3月28日(月)より
毎週月曜から土曜 午前7時15分から午前7時30分
毎週日曜 午前9時30分から午前11時 1週間分6話連続
15分×全151回
以前、「澪つくし」「あぐり」「マー姉ちゃん」と連続出演している岩本多代さんの出演朝ドラを調べて、その中の「芋たこなんきん」って面白そうだなと思っていたので、再放送が決まってうれしい。でも、本音を言うと「純ちゃんの応援歌」こそこのBS枠で見たかったよね。休止、休止でもったいない。
【放送予定】 2022年4月21日(木)より ※放送開始日 変更の可能性あり
毎週月曜から金曜 午後4時30分から午後5時
1日2本ずつ放送 総合
15分×全162回
しかしここ、時間帯は10分ずれたけど、潰れる時は潰れるだろうし、大きく変える気はないんだね。これはねー、欽ちゃんがペットの犬としてナレーションしてた気がするんだけど、それがあまりハマってなかった気がする。
1997年の「あぐり」で朝ドラの面白さに気付いたけど、1993年前期の「ええにょぼ」くらいからちょこちょこ見てた。「ひまわり」はさほどハマらなかった作品だったような。現代ものだったから、今見たら感想変わるかもしれないけどね。
「あぐり」からまた見続けていた朝ドラも2002年の「さくら」で完全に視聴をやめて、2010年の「ゲゲゲの女房」まで見てなかったので、その中の「芋たこなんきん」ってどんな作品だったのか興味あります。夕方の方が古い作品って珍しい。2006年なんてつい最近に思えるけど、16年前か…(-_-;)