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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (100)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

空襲を心配して磯野家に電話をかけ続ける花江(岩本多代)や隆太郎(戸浦六宏)。一方、磯野家の焼夷弾を消し止めた村田(園田裕久)や牛尾(三国一朗)たちは、偵察してきた町の酷い有り様を語る。炊き出しに集まったり災者の中には、目の前で孫を失った老婆(牧よし子)もいた。千代(二木てるみ)も、マリ子(熊谷真実)が描いた画を命がけで持ち出して逃げてくる。そんな中、避難してきたトミ子(村田みゆき)が産気づき…。

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深夜、東郷家に花江から電話があった。

貴美「はい、もしもし、東郷でございますが」

花江「おかあ様でいらっしゃいますか? 私です。岩村でございます」

貴美「はい、あの一体?」

 

花江「はい。今、役所の主人から電話がございまして今夜は福岡が相当ひどくやられたそうですのよ」

貴美「まあ…!」

花江「それで磯野のうちに何度も電話をかけているんですけれど、それが全然通じませんの。どうしたらよろしいでしょうか?」

貴美「分かりました。こちらからもかけてみますがご主人様の方へ何か連絡がございましたら、どんなことでも結構でございますからどうぞ。はい、お知らせくださいましてありがとうございました」

 

電話を切った貴美のそばに隆太郎が来ていた。

隆太郎「今夜のは福岡だったとか」

今の時刻は深夜3時少し前。今度は隆太郎が電話をかけた。

 

しかし、磯野家の電話は鳴らず。電話線が切れてる!?

 

深夜、福岡市内を襲った業火は夜の白む頃になってようやく下火になりました。

 

街の様子を見に行っていた村田と軍平が帰ってきた。

軍平「無事で残っとるのはこの一角だけですばい。線路伝いに行ってみましたばってん、大濠公園までもが行き着くことができんありさまたい」

はる「それではお千代ねえやの呉服町へは?」

村田「とても無理ですばい。こっちの方へ逃げてきよる人ばつかまえて聞いたとですが、市の真ん中と博多が一番ひどか様子ですばい」

はる「無事でさえいてくれたら…」

軍平「大丈夫たい! 何せまだ道も熱気で歩かれんし、それに目ば煙でやられて行き着くことができんとですよ。ばって少し収まったら断固、もういっぺん行って捜してきますけん!」

 

はる「お願いいたします。(後ろを振り返って)マリ子! とにかく握れた分から村田さんと牛尾さんに召し上がっていただきなさい」

マリ子「はい!」

マチ子「それじゃあ、今、お茶を」

軍平「いやいや、なんのなんの。焼けた人のことを思うたら水で十分ですたい」

はる「村田さん、ちょっと落ち着きましたら逃げていらっしゃる方に炊き出しがあるからと声かけてくださいね」

村田「承知しました」

 

村田が空襲の日に磯野家に居合わせたことを不思議に思い、尋ねたはる。村田はヨウ子の体にいいだろうと梅酒を持参していたものの、六本松まで来たところで空襲のサイレンが鳴り、ここまで来たら引き返すよりいいだろうと磯野家まで来たが、いろいろあって一升瓶は不明に…。

 

はる「よかとですよ、村田さん。火を消し止めてくださっただけでももう本当に…」

村田「いやいや、ばってん…」

軍平「いや、ほんなこつ、もしまあこの家が燃え上がったら必ず私んとこも焼ける思いましたばって、もう村田さんと2人、夢中になって消しましたばい」

 

マリ子「荒戸や港町の方はひどかったんでしょうね」

軍平「はい。あそこはもう…焼かれてきたら海しか逃げ場がなかですけんね」

マチ子「マー姉ちゃん…トミ子さんのことやね」

そういえば、福岡に戻ると方言も戻ってる。

 

はる「私も案じていたんですよ。あの方はただのお体ではないしね」

マリ子「今、7か月なんです。小さい子を連れてどうやってあんな体で火の中を…」

マチ子「私が見に行ってくるから」

マリ子「マッちゃん…」

マチ子「煙が収まり次第、おじ様たちと一緒に必ず捜しに行ってくる。新聞社も心配だし」

 

一平が焼きだされた人々を連れてきた。

はる「さあさあ…どうぞどうぞ。どうぞお上がりあそばして」

ケガをしている女性「ばってん、こん姿では…」

はる「構わないですよ。戦争中でございますからね。さあどうぞ。中に入っておむすびを召し上がってお休みください」

 

隆太郎はその後も電話をかけ続けていたがつながらない。ラジオからニュースが流れた。

ラジオ「では続いてニュースを申し上げます。西部軍管区司令部、午前6時発表、マリアナ基地の敵、B29約60機は昨夜22時30分ごろより本20日0時30分ごろまでの間、宮崎県東部海面より単機、または少数編隊をもってついに九州本土に侵入。約2時間にわたり、福岡市に対し主として焼夷弾による攻撃を実施せり」

 

しかし、戦後の公式発表ではこの夜、来襲したB29は二百数十機だったそうです。

 

東郷家のラジオのアップから途中で磯野家のラジオのアップに代わり、マリ子が炊き出しを配る様子が映し出される。2枚並べた座布団に横になるおばあさんに声をかけるマリ子。

マリ子「おばあさん。あっ、よかですよ。疲れていらっしゃるんですもの。横になったまま召し上がってくだされば。さあどうぞどうぞ。それでおばあ様はどこで?」

老婆「大名ですたい」

マリ子「大名から…大変でしたね。本当によくこんな火の中を」

 

老婆「一緒に逃げた孫が…目の前でやられたとです。ザ~ッとまるで雨の降るごと焼夷弾が落ちてきて孫の頭にも…」

マリ子「おばあさん」

老婆「夢中でな、孫の着物についた火ば消して…頭の…頭の半分のうなったのを抱いて、うち、そこへ座っとった。どこもここも熱うて息もできんで…地獄たい。誰かがザブンと水をかけてくれたとば覚えとるとです。そんお人に手ば引っ張られて、どこばどうしてここまで…このお宅に来たとか覚えとらんとです」

 

マリ子「そうですか。でももう安心ですよ。これを召し上がってゆっくり手足を伸ばされたら」

老婆「これからの若い者が亡くなって…(膝をたたいて悔しがる)こげん年寄りが残るなんて…! 反対ばい!」

マリ子「おばあさん…」

はるも加津子も言葉が出なかった。

 

そこにお千代が来た。はるやマリ子が駆けつけて家に上げた。千代が背中に抱えていたのはマリ子が描いた絵だった。

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↑お千代ねえやに渡したのは福岡を去る日だったけど、完成させて石井先生に見せた回。

 

千代「部屋ば逃げ出す時はもう火の海でした。この絵ば持ち出すだけで精いっぱいで…」

マリ子「お千代ねえや…」

 

はる「マチ子とは行き合わなかった?」

千代「はい、お会いしました」

はる「どこで?」

千代「西部日本新聞社の近くです。あそこらへんだけが焼け残っとって、うちのことが心配だから捜しにきたと言うてくださいました」

マリ子「それで港町の方は?」

 

千代「もう…分からんとです。もう、うちを出たら西も東も火と煙で…。そんうち誰かが十五銀行の地下室行けって叫んだもんだから、うちもついていったとですよ。そしたらもう中へ入ったら人がいっぱいで入れんとですよ。須崎や港町の方はすごい勢いで燃えてるっていうし…」

加津子「それであんたはどこへ逃げたと?」

千代「はい。ぬれ布団ば頭からかぶって火の中を思い切って引き返したとです。それで一気に東公園まで逃げました。もうこれで皆さんとお会いできないかと思ったら、もう泣けて泣けて…」

 

はる「さあ、熱いおみおつけ飲んで、ねっ? 体を横にするんですよ」

千代「はい」

はる「お千代。あなたは私たちんとこへ帰ってきたのよ」

 

心配だったトミ子が姿を見せたのはそれから間もなくのことでした。

 

トミ子はフラフラになりながらやって来て、すぐに布団に寝かされた。

はる「かわいそうに…それではこの体で一晩中、水の中へ?」

トミ子「いきなり周りから燃えてきたですけん、逃げ場がのうなって…。お父ちゃんがうちの船で海へ逃げようと言うたとやけど、そん船が目の前で何隻も燃えて沈んでいったとです」

千代「でもよかった。あの火の勢いたい。トミ子さんの方はもう駄目と思うとりましたとよ。本当によう頑張りんしゃったですね」

トミ子「お父ちゃんがこん子たちば2人抱えて1人おぶって、うちに声をかけ続けてくれたけん。子供のためにも死んだらいかんと思うて」

マリ子「そうよ。死んではいけなかったのよ」

 

トミ子が急に苦しみ出した。

加津子「おなかに破片が!?」

はる「いいえ。これはお産ですよ」

マリ子「でもまだ7か月よ」

はる「でもね、この体で一晩中、無理をしたんですからね」

 

マリ子は医者を呼ぼうとするが、田中産院は丸焼け、鳥飼のお産婆さんも焼けていた。

マリ子「だったらどうしたらいいのよ!?」

はるは新しい浴衣とタオルを用意するようマリ子に言い、マチ子にはびょうぶを持ってくるように言う。加津子ははるが出産させる気でいることに驚く。

 

うずくまっていた老婆が顔を上げた。

老婆「ならはよ湯ば沸かしんしゃい」

マリ子「おばあさん」

老婆「うちは産婆たい。うちが無事に取り上げてやるからね。大丈夫たい。七月子(ななつきご)でも一晩水につかってもびくともせん子やったら必ず無事に産まれるばい!」

はる「お願いしますわ、おばあさん!」

 

老婆「ああ。まず気ぃばしっかり持つとよ。よかね? お産婦さん」

トミ子「はい」

焼け出された女性「あの、私…私が湯ば沸かしますけん。釜場、どこにあっとですか?」

マリ子「はい!」

 

あのおばあさんにとっては明け方に直撃を受けて死んだ孫の命を再びその手に取り戻す思いだったのでしょうか。それから約1時間後。

 

産声が聞こえ、マチ子とマリ子は外に出て抱き合って泣いた。

 

あまりに多くの尊い命が失われたこの日でしたが、新しい命が一つ、今、誕生したのです。

 

トミ子さんの赤ちゃんが無事生まれてよかった。

 

老婆役を熱演した牧よし子さんが気になって調べてみました。wikiには90年代あたりまでの作品が載っていたけど、それ以降はぱったり。でも、「マー姉ちゃん」の記述はなかった。そして、まだご存命の様子!? 東京都出身で山脇学園高等女学校卒。へえ~、長谷川町子さんの一学年下だから同時期に在籍してたのかもね。

 

他の作品だと「二人の世界」のアパートの住人とありました。多分、二郎と麗子が暮らす新婚夫婦の下の階の大家さんかな? 二人で部屋でゴーゴー踊ってたら(踊るな!)「野中の一軒家じゃないんですから!」と怒鳴り込んだ人。お怒りはごもっとも。

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脇の人にも容赦なくうまい人をぶっこんで来るので面白いんだなー。

 

しかし、さすがに今日のような回でも、はるは世話出来てうれしいだろうなみたいな揶揄は不快だな。焼け出された人を受け入れなければ産婆さんもいなかったんだから。